花は毒にも薬にも…
こんにちは、花崎です。
鉢雷…というよりも双忍のお話。
主体は三郎です。
◆注意事項◆
・オリジナル設定有
※三郎の出自、主に母上やその容姿の描写があります
・鉢+雷(限りなくCPに近いですがそういうつもりはないので//
上記、問題のない方は「Read more」よりお進み下さい。
鉢雷…というよりも双忍のお話。
主体は三郎です。
◆注意事項◆
・オリジナル設定有
※三郎の出自、主に母上やその容姿の描写があります
・鉢+雷(限りなくCPに近いですがそういうつもりはないので//
上記、問題のない方は「Read more」よりお進み下さい。
どんっ
衝撃に面食らう様子もなく穏やかな声が頭の上から降る。
「どうしたの?」
「どうしたの?」
困ったように笑う人の手がゆっくりと髪を滑っていく。
駄々っ子のようになんでもないと押し付けた顔をそのままに首を振ればますます困った笑みが深まっていくのが分かる。
「三郎?」
「三郎?」
どうしたの?
やわらかいやわらかい、あの人と同じ音。
〈温かい手〉
「ほんとうのことを知ったら誰もあなたを愛してはくれないわ」
艶やかに紅を引いた口元をにんまりと、それはそれは楽しそうに、笑みに彩ったその女性は煙管を片手に振り向きもせずに言った。
「だって、わたしにそっくりだもの。」
ご愁傷様といわんばかりの言い草にふすまにかけていた手を離し振り返る。
黒い格子窓からはあふれるばかりの桜が見える。
座敷の主は桜と負けず劣らずの笑みを変わらずに桜に向けていた。
「ははうえ」
「まだ、私をその名でよべるのねぇ。」
嬉しいこと。忘れていると思ったわ。
心にもない言葉がつむがれる。
ゆらゆらと紫煙が立ち上る。
風がない部屋ではまっすぐに
「私をお恨みですか」
「なぁぜ?」
カンっと軽く強いと同時に盆に灰が落ちる。やわらかい軌跡が途絶える。
すっと衣擦れの音を立てゆっくりと動く音がする。
二歩分ほど離れた場所にゆっくりと座ると座るように目で促される。
「母上。」
「ねぇ、さぶろう…難儀なものだね」
白魚と形容されるその指がそっと鬢を外す。
色素の薄い髪が背に流れる。
座敷に二人しかいない。
母が隠す髪と瞳は己と
「強く生きなさい。」
「はは…」
「この髪がなに、この瞳がなに、下賤のもの?好きに言わせなさい。何も悪いことはしていないのだから堂々としていなさい。」
「…。」
「私がここにいる理由が自分のせいだなんて思わないでちょうだい。」
そらし続けられた視線が合う。
そらし続けられた視線が合う。
晴れ渡る空を思い起こさせる真っ青な瞳。
「あなたなら大丈夫。」
すっと伸ばされた手が、直接人のぬくもりを感じることのない面に触れた。
「ふふ、ここに来るのなら面くらい外しなさい。久しぶり…なんだから」
ぐっと力のこもった腕をゆっくりとなでられた。
(あぁ、温かいな)
桜が咲き誇るこの時期に決まってふらりといなくる自分にきっと聞きたいことも尋ねたいことも沢山あるだろうに聞く代わりに雷蔵はゆっくりと触れてくれる。
(帰ってきた)
白粉と香と何か分からない香りが満ち、悲しみと寂しさが同居している場所からここに帰ってこれた。
(べつに囚われていた訳でもないのだけど)
「三郎。」
ゆったりとした声掛けに、答える代わりに腕を撫ぜていた手を絡め取る。
忍具を扱ってさえいなければ綺麗だろうその指が自分のそれに絡まるのをぼんやりと見る。
「・・・・ははうえ。」
ついて出た言葉に一瞬自分の身体が固まったような気がする。
(嗚呼やってしまった…)
誰にも家族のことは伝えていない。
あの恐ろしいまでに冷たい仕打ちの話も帰る家がない話もなにも
「さぶろう。」
一つ一つゆっくりと告げられた名にずっと押し付けられていた顔を離す。
「らいぞう。」
己の言葉が思ったよりもずっとずっと弱く響く
「なぁに?」
「笑ってくれた。」
誰がとも、問われなかった。
その代わりに向けられたのはどこか淋しげな笑顔。
いつもだったらこの笑顔をみれば自分の感傷などどうでもよくなるのだけど
「そう、よかったね。」
「私の所為じゃないって…絶対そうなのに。」
違うって笑ってくれた。
それよりも二度と見られないと思っていた笑顔が脳裏をよぎる。
きれいにきれいに、けれど淋しさがあふれ出ていて。
きれいにきれいに、けれど淋しさがあふれ出ていて。
「よかったね。」
柔らかい言葉がとてもよく似ていた。
「三郎。おかえり。」
「ただいま」
「ただいま」
改めて伝えられた言葉に、悲しみがあふれた。
あの人が自分にその言葉を告げてくれることはないのだと。
あの人が自分にその言葉を告げてくれることはないのだと。
FIN
捏造設定が大好きです。
ありがとうございました♪
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