花は毒にも薬にも…
お久しぶりです。
花崎です。
先日大好きな絵師様から設定を頂きまして、
5い中心ですが、現パロというかマフィアパロというか…
以下の注意事項に目を通していただいて、
問題のない方だけ先へお進みくださいませ。
◆注意事項◆
・5い中心マフィア?パロ
*現パロに近いものになり、ます
・お約束のシリアス満開orz
・流血の表現有り
本文は「Read more」へ
花崎です。
先日大好きな絵師様から設定を頂きまして、
5い中心ですが、現パロというかマフィアパロというか…
以下の注意事項に目を通していただいて、
問題のない方だけ先へお進みくださいませ。
◆注意事項◆
・5い中心マフィア?パロ
*現パロに近いものになり、ます
・お約束のシリアス満開orz
・流血の表現有り
本文は「Read more」へ
表参道に面し、色とりどりの花を溢れさせるその花屋の前、気付けば近くに居た店員に予算を伝え、花束を一つ頼んでいた。
日ごろの癖でタバコに伸びる手を留め、代わりに店の外からとまることなくどこかを目指しているのだろう人波を観察する。
夏も盛り、旧暦であればそろそろ秋の声が聞こえてくるはずだ。
(そんな雰囲気かけらもないけれど)
ジーンズのポケットに突っ込んだままの携帯が静かに振るえ、存在を主張する。とらずとも誰からかわかり、静かに留守電を押した。
「こちらで如何でしょうか?」
顔を上げた店員さんの腕には、白い花を基調にした柔らかい色の花束があった。
渡す相手のイメージだけを伝え後はお任せでと面倒な注文であったにも関わらず、出来上がったそれはこちらの思惑から外れることなく、派手すぎずそれでいて存在感のあるものが出来上がった。
(少しかわいらしい気もするけれど)
だからと言って艶やかなものがいいかといえば、そういうものでもなく
「構いません。お手数をお掛けいたしました。」
「いえいえ、穏やかな雰囲気でとてもお綺麗な方なんでしょうね。」
これを受け取る方はとこちらをほんのすこし悪戯っぽく見ながら、笑う。
「そうですか?」
「えぇ、だってご注文の際にとても穏やかな目をされていましたから。」
テキパキと綺麗に包まれていく花束からそっと目をそらす。
(受け取ってくれる人、ね)
穏やかな雰囲気、傍から見ていればそういうイメージを抱くのかもしれない。
花束を注文した自分は、そうだ、外から見た雰囲気だけを伝えていたかもしれない。
穏やかな人と形容された花束の主。
記憶の中、己の近くにそっと佇む姿は朧けで、何かと言うと、黒曜の瞳がすっと細くなる、あの一瞬の冷たさばかり思い出すというのに。
【瑠璃唐草】
遅くまで飲んでいたせいか、結構な時間寝たはずにも関わらず、ずっしりと四肢が重い。
さくさくと起き上がる気が起きず、首だけ動かせば、夜半から降り始め、夜が明けても降り止まぬ雨は昼が近くなってもなお視界を煙らせていた。
(今日も雨か)
別段出かける用事もないので、雨だろうが晴れだろうが大して変わりはしないのだが、気持ちの問題で、益々体が重く感じる。
「あー…。」
誰に聞かせるわけでもなくモレ出た声は、一人きりの部屋にゆっくりと溶けた。
帰ると言っていた同居人が帰っている雰囲気はせず、ならば朝ごはん(という時間でもないのだが)も作らなくて構わないかと、ごろんと広い窓のほうへと転がった。
「へいすけ?」
きちんと閉めて寝たはずの窓が薄く開いていて、動かぬ頭でぼんやりと思い当たる人をよぶ。返事はない代わりに、小さくカチリとライターの音が耳に届く。
ソファベッドで眠っている自分を起こさないで居てくれたのだろうと勝手に解釈する。
姿は見えないにも関わらず、彼が持っているだろうタバコから緩く吐き出される煙は、雨で煙る視界の中、ひときわ白く横切る。
仕事帰りの兵助はその容貌を際立たせるほどに静かだ。
「お帰り。」
「ただいま。おこしちゃった?」
「気付かなかった。」
別に不覚だ、とかそういう感情は持っていないが、仕事上人が部屋に入ってきたことに気がつかないというのは如何なものかと、あくびをかみ殺しながら思う。
はだしの足があけた窓のサッシに食い込む。冷たい。
日ごろは男二人分の様々な洗濯物がかけられるベランダも今日は気だるげな煙がふわふわと漂うばかりである。
(早く止んでくれないと洗濯物がたまる)
人が思うより二人でいるときに言葉はなく、別段それに不自由を感じるわけではないが、何か内に飼うものを必死に宥めているのだろう兵助の頭に徐に手を伸ばした。
ベランダに出ていない分高くなる自分の目線。ほんの下に兵助の頭。
ぽんぽんと音は鳴らぬ代わりに手が上下する。
くるりとこちらを向いた眼差しは、普段のそれと変わらず、真意を見抜こうとじっと見つめてきた。漆黒と言う色が当てはまりそうな黒曜の瞳は大きく、泣いているわけでもないのに含む涙が多いらしく、ゆらゆらとゆれている。
「勘ちゃん。」
「んー?」
「腹減った。」
雰囲気も何もあったもんじゃないなと(とはいっても二人の間にロマンチックなものが横たわる理由はない)思いながら、冷蔵庫の中身を思い浮かべる。殺伐とした世界に身をおきつつも案外と料理をする二人の冷蔵庫には常に何かしらの用意がある。
「腹減ったか。」
「昨日の夕方から何も食べてないんだよね。」
長時間の仕事で飲まず食わず、思うより体力の消耗はしているんだろう。
「寝た?」
「とりあえずそれより何かいれたい。」
白い手が胃の辺りを彷徨う。
「そ。じゃ、なんか作るから待っていて。」
思い浮かべた冷蔵庫の中身で兵助のお気に入りの一品が作れることに思い当たって一人笑う。ぺたぺたと裸足の足跡がつくようにフローリングを進めば、程なくして、カラカラと軽い音と共に慣れた気配が部屋の中に滑り込んでくる。
日頃よりも酷くいびつな気配。
(何があったのかな)
敢えて聞く必要はないかと己の中で完結し、マカロンカラーのフライパンを取り上げる。個人的には鉄のものがいいのだけれど、可愛いのを見つけたと我が家に持ち込まれたそれは、見た目のちゃちさを凌駕するほどの持ちのよさをみせている。
(使い勝手はそんなにわるくない)
だけれども問題は色である。似合わない、と思う。兵助にも自分にも。
ぺたぺたとやる気のない足音がする。
普段の兵助しか知らない女性や後輩が見たら何と言うだろうか。
「何を探しているの、何を。」
開けられたままの冷蔵庫及び冷凍庫から逃げ出す冷気が裸足の足を這い登る。
寒い季節ではないけれども、気持ちのいいものではない、と思う。
「買っておいたと思ったのだけど。」
「ん?」
「氷珈琲。」
「あぁ、」
「あぁ?」
「飲んだ。昨日の夜。帰ってきてから。」
素早く卵を薄く広げながら答える。
基本的に冷蔵庫に入っていればお互いの共有財産となり、どうしても奪われたくないものは名前を書くという単純なルール。
「名前書いてなかった?」
「ごめん、覚えてない。明日仕事の帰りに買ってくるよ。」
「…卵とろとろにして。」
大きな金額が動くわけでも後々まで何か引きずるわけでもない、小さな注文に御意と答えて、くるりとご飯を包んだ。
(日常って、日常だから幸せなんだよ、か)
己が所属する場所とは大分毛色の違うそこを束ねる友の言葉が不意に蘇る。
あの時はなんだろうか、彼の先輩が持ってきた本の中身を講釈してもらっていたのだっけ。
「兵助、お皿とって。大き目の。」
「ん。赤と緑かな。」
「あぁ、オムライスだから。」
「見た目がよくないと食べる気が起きないのだ。」
潔癖だの拘りなど、あるようでその実ない兵助が時折起こす拘りは拒絶する必要がないものが多く、早くと急かしながら受け取る。
半熟卵のとろとろオムライス、ユニオンジャックと星条旗の旗を立てて出来上がり。
「フランスは切れたの?」
「イタリアもないよ。」
「買ってこないと。」
「どんだけオムライス食べればきがすむの。」
二人分のオムライスとサラダと、トマトとモッツァレラチーズのあれこれ。
ことりとおかれた揃いのマグには温かい紅茶が入り、テーブルの上が華やかになった。
「頂きます。」
揃った声が静かに部屋に溶けた。
ふと見た窓の外、もう雨は止んでいた。
to be...
日ごろの癖でタバコに伸びる手を留め、代わりに店の外からとまることなくどこかを目指しているのだろう人波を観察する。
夏も盛り、旧暦であればそろそろ秋の声が聞こえてくるはずだ。
(そんな雰囲気かけらもないけれど)
ジーンズのポケットに突っ込んだままの携帯が静かに振るえ、存在を主張する。とらずとも誰からかわかり、静かに留守電を押した。
「こちらで如何でしょうか?」
顔を上げた店員さんの腕には、白い花を基調にした柔らかい色の花束があった。
渡す相手のイメージだけを伝え後はお任せでと面倒な注文であったにも関わらず、出来上がったそれはこちらの思惑から外れることなく、派手すぎずそれでいて存在感のあるものが出来上がった。
(少しかわいらしい気もするけれど)
だからと言って艶やかなものがいいかといえば、そういうものでもなく
「構いません。お手数をお掛けいたしました。」
「いえいえ、穏やかな雰囲気でとてもお綺麗な方なんでしょうね。」
これを受け取る方はとこちらをほんのすこし悪戯っぽく見ながら、笑う。
「そうですか?」
「えぇ、だってご注文の際にとても穏やかな目をされていましたから。」
テキパキと綺麗に包まれていく花束からそっと目をそらす。
(受け取ってくれる人、ね)
穏やかな雰囲気、傍から見ていればそういうイメージを抱くのかもしれない。
花束を注文した自分は、そうだ、外から見た雰囲気だけを伝えていたかもしれない。
穏やかな人と形容された花束の主。
記憶の中、己の近くにそっと佇む姿は朧けで、何かと言うと、黒曜の瞳がすっと細くなる、あの一瞬の冷たさばかり思い出すというのに。
【瑠璃唐草】
遅くまで飲んでいたせいか、結構な時間寝たはずにも関わらず、ずっしりと四肢が重い。
さくさくと起き上がる気が起きず、首だけ動かせば、夜半から降り始め、夜が明けても降り止まぬ雨は昼が近くなってもなお視界を煙らせていた。
(今日も雨か)
別段出かける用事もないので、雨だろうが晴れだろうが大して変わりはしないのだが、気持ちの問題で、益々体が重く感じる。
「あー…。」
誰に聞かせるわけでもなくモレ出た声は、一人きりの部屋にゆっくりと溶けた。
帰ると言っていた同居人が帰っている雰囲気はせず、ならば朝ごはん(という時間でもないのだが)も作らなくて構わないかと、ごろんと広い窓のほうへと転がった。
「へいすけ?」
きちんと閉めて寝たはずの窓が薄く開いていて、動かぬ頭でぼんやりと思い当たる人をよぶ。返事はない代わりに、小さくカチリとライターの音が耳に届く。
ソファベッドで眠っている自分を起こさないで居てくれたのだろうと勝手に解釈する。
姿は見えないにも関わらず、彼が持っているだろうタバコから緩く吐き出される煙は、雨で煙る視界の中、ひときわ白く横切る。
仕事帰りの兵助はその容貌を際立たせるほどに静かだ。
「お帰り。」
「ただいま。おこしちゃった?」
「気付かなかった。」
別に不覚だ、とかそういう感情は持っていないが、仕事上人が部屋に入ってきたことに気がつかないというのは如何なものかと、あくびをかみ殺しながら思う。
はだしの足があけた窓のサッシに食い込む。冷たい。
日ごろは男二人分の様々な洗濯物がかけられるベランダも今日は気だるげな煙がふわふわと漂うばかりである。
(早く止んでくれないと洗濯物がたまる)
人が思うより二人でいるときに言葉はなく、別段それに不自由を感じるわけではないが、何か内に飼うものを必死に宥めているのだろう兵助の頭に徐に手を伸ばした。
ベランダに出ていない分高くなる自分の目線。ほんの下に兵助の頭。
ぽんぽんと音は鳴らぬ代わりに手が上下する。
くるりとこちらを向いた眼差しは、普段のそれと変わらず、真意を見抜こうとじっと見つめてきた。漆黒と言う色が当てはまりそうな黒曜の瞳は大きく、泣いているわけでもないのに含む涙が多いらしく、ゆらゆらとゆれている。
「勘ちゃん。」
「んー?」
「腹減った。」
雰囲気も何もあったもんじゃないなと(とはいっても二人の間にロマンチックなものが横たわる理由はない)思いながら、冷蔵庫の中身を思い浮かべる。殺伐とした世界に身をおきつつも案外と料理をする二人の冷蔵庫には常に何かしらの用意がある。
「腹減ったか。」
「昨日の夕方から何も食べてないんだよね。」
長時間の仕事で飲まず食わず、思うより体力の消耗はしているんだろう。
「寝た?」
「とりあえずそれより何かいれたい。」
白い手が胃の辺りを彷徨う。
「そ。じゃ、なんか作るから待っていて。」
思い浮かべた冷蔵庫の中身で兵助のお気に入りの一品が作れることに思い当たって一人笑う。ぺたぺたと裸足の足跡がつくようにフローリングを進めば、程なくして、カラカラと軽い音と共に慣れた気配が部屋の中に滑り込んでくる。
日頃よりも酷くいびつな気配。
(何があったのかな)
敢えて聞く必要はないかと己の中で完結し、マカロンカラーのフライパンを取り上げる。個人的には鉄のものがいいのだけれど、可愛いのを見つけたと我が家に持ち込まれたそれは、見た目のちゃちさを凌駕するほどの持ちのよさをみせている。
(使い勝手はそんなにわるくない)
だけれども問題は色である。似合わない、と思う。兵助にも自分にも。
ぺたぺたとやる気のない足音がする。
普段の兵助しか知らない女性や後輩が見たら何と言うだろうか。
「何を探しているの、何を。」
開けられたままの冷蔵庫及び冷凍庫から逃げ出す冷気が裸足の足を這い登る。
寒い季節ではないけれども、気持ちのいいものではない、と思う。
「買っておいたと思ったのだけど。」
「ん?」
「氷珈琲。」
「あぁ、」
「あぁ?」
「飲んだ。昨日の夜。帰ってきてから。」
素早く卵を薄く広げながら答える。
基本的に冷蔵庫に入っていればお互いの共有財産となり、どうしても奪われたくないものは名前を書くという単純なルール。
「名前書いてなかった?」
「ごめん、覚えてない。明日仕事の帰りに買ってくるよ。」
「…卵とろとろにして。」
大きな金額が動くわけでも後々まで何か引きずるわけでもない、小さな注文に御意と答えて、くるりとご飯を包んだ。
(日常って、日常だから幸せなんだよ、か)
己が所属する場所とは大分毛色の違うそこを束ねる友の言葉が不意に蘇る。
あの時はなんだろうか、彼の先輩が持ってきた本の中身を講釈してもらっていたのだっけ。
「兵助、お皿とって。大き目の。」
「ん。赤と緑かな。」
「あぁ、オムライスだから。」
「見た目がよくないと食べる気が起きないのだ。」
潔癖だの拘りなど、あるようでその実ない兵助が時折起こす拘りは拒絶する必要がないものが多く、早くと急かしながら受け取る。
半熟卵のとろとろオムライス、ユニオンジャックと星条旗の旗を立てて出来上がり。
「フランスは切れたの?」
「イタリアもないよ。」
「買ってこないと。」
「どんだけオムライス食べればきがすむの。」
二人分のオムライスとサラダと、トマトとモッツァレラチーズのあれこれ。
ことりとおかれた揃いのマグには温かい紅茶が入り、テーブルの上が華やかになった。
「頂きます。」
揃った声が静かに部屋に溶けた。
ふと見た窓の外、もう雨は止んでいた。
to be...
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