花は毒にも薬にも…
花崎です。
ドマイナーなCPの為、以下の注意事項を常より気にしていただければ幸いです。
◆注意事項◆
・伊鉢
・卒業後
・シリアス展開(シリーズにしたいなんてそんな…げっほん)
「残る思いだけ、残せない
貴方に会いたいんだ、伝えたいんだ」
という鉢のお話です。
上記、問題のない方はReading moreへどうぞ。
ドマイナーなCPの為、以下の注意事項を常より気にしていただければ幸いです。
◆注意事項◆
・伊鉢
・卒業後
・シリアス展開(シリーズにしたいなんてそんな…げっほん)
「残る思いだけ、残せない
貴方に会いたいんだ、伝えたいんだ」
という鉢のお話です。
上記、問題のない方はReading moreへどうぞ。
「驚きましたか?」
印象に違わない微笑を浮かべて差し出された手を取る自分に問う声がする。
「綺麗だね。」
きっちりと結い上げられた髪。薄く引いた紅に薄桃の頬。
三郎が身につけている着物は丁寧に織り上げられている京織物。
手触りだけで高価なものだと知れる。
「よかった。」
ああ、よかった。
「一言伝えたいことがあって寄ったんですよ。脅かそうと思ってこんな姿(なり)で。」
ほっとしたように笑って、出された茶を躊躇いなく口に運ぶさまを見て矢張り彼も自分とは違うのだと認識する。
誰もが他人に出されたものを警戒するわけでないのは経験上分かってはいるがそれでももう何年もあっていない人から勧められたもの。
(敵対している可能性とて、あるだろうに)
(敵対している可能性とて、あるだろうに)
「私が躊躇いなく飲むのが不思議ですか?」
白い手の中で湯飲みをもてあそびながら目を伏せる。
「いくら何でも警戒心がないなぁとおもって。お前そういうの気にするだろう?」
「そうですねぇ、いつもなら。ただ、あなたには私を殺せない。と思ったので。」
ちょこんと首を傾げるさまは今の年よりもずっと昔に見た彼と記憶を混ぜる。
「馬鹿にされた、のかな。鉢屋?」
「その名でお呼び下さいますな。先輩を?馬鹿に?まさかまさか。」
「そうかな?」
「そうですよ。私は一度だってあなたに敵わなかった。」
ふっと伏せられた眼差しに違和感を覚え、小さく、ごく小さく名前を呼んだ。
「なんです?悲しそうな顔をして。」
クスクスクスと笑いながら伸ばされた腕をぼんやりと目で追う。
触れられた冷たさに、確信する。
「鉢屋、お前・・・。」
「なんです?」
と、同時に反転した視界に上に寂しそうな笑み。
(三郎、お前・・・)
色々なものが交差している己の思考をおいて、上から見下ろす人の肩から滑り落ちる淡い髪色が何かを歪ませる。
畳のひんやりとした感触がじわじわと体を侵食する。
「ずっと探していました。あなたが卒業したあの日から、ずっとね。」
塞がれた口。
合わさる相手のそれがやはりひんやりと冷たくて。
合わさる相手のそれがやはりひんやりと冷たくて。
「うそ。」
離れた合間に言葉を落とす。
「本当ですよ。先輩はきっと信じてはくれないでしょうけど。」
ぐっと己の胸に顔を埋め、くぐもった声を上げる。
「三郎、お前・・・。」
落ち着かせるようになでた背は外の空気に反してずっとずっと冷たかった。
「伊作先輩。」
ひんやりと冷たい唇がのどに触れる。
彼の人の触れる腕も唇も自分のそれより温かいことを自分が一番良く知っていた。
彼の人の触れる腕も唇も自分のそれより温かいことを自分が一番良く知っていた。
「先輩。」
「お前・・・(死んだのか)」
思い当たった瞬間に、どろりと垂れた生暖かさに背筋が凍りつく。
笑っているはずなのに冷たいその頬から紅が滴り、掠れた声は届かぬ願いを叶えてくれて切々と訴える。
「こんなこと言いたくないですけどね、貴方に殺して貰いたかった。」
誰とも知らないものに刺された痛み。
死ぬのだという確信はとろとろと流れる紅が証明していた。
死ぬのだという確信はとろとろと流れる紅が証明していた。
ああ、貴方にもう会えない。
あの日貴方がした誤解を解く為にもう一度会いたかった…
「覚えていますか?あの日のことを。」
「いつの話?」
「貴方が私に聞いた日ですよ…」
貴方の卒業が決まったあの日に
『お前、死ぬ間際に何を願う?』
『なんですか?突然。』
『いいから。』
『そうですねぇ、愛するものを見たいと思うのでしょうね、きっと。』
脳裏に浮かんだのは目の前にいる人。
『あぁ、なるほどね』
思い当たったのだろう、ふわりと優しげにその目が笑った。
(あぁ、間違えた)
『誰とは聞かないんですか?』
思ったよりも掠れた声が出た。
『なに?』
『あの、だから…』
もう一回簡単に聞けばいいと分かっている頭とは裏腹に言いよどんだ。
なにか言わなければと口を開いたのと同時に引き寄せられ重ねられた唇。
『痛いですよ。』
置きみやげと言わんばかりに噛み付かれたところからじんわりと滲む温もり。
伝えたかったんですよ。
きちんと、伝え忘れましたから。
そういってふわりと笑うその笑顔に先ほどのぞっとするような冷たさはなく、
記憶のそれとも重ならない柔らかい笑み。
記憶のそれとも重ならない柔らかい笑み。
「私は間際に貴方に会いたかった。貴方に抱きしめてもらいたかった。貴方に…」
一言だけでも伝えたかった。
死ぬ間際にあの学舎で出会ったもの達を、大切なとも達を思い出したのも嘘ではない。
けれど、あの春の日に目の前で空を見上げる貴方にも会いたいと思った。
ただ、貴方にあってしまえば自分はきっと耐えられないとも同時に思った。
とうに決めた覚悟をかなぐり捨て、死にたくないと、願ってしまう。
「もうお仕舞いですけど。貴方に会えました。貴方に殺してはもらえませんでしたけどね。」
「三郎お前、何が・・・」
「別に何も…伝えたかっただけです。」
もう一度笑って触れた唇の温かさのほか、もう何もなかった。
とろり…
とろり…
とろり…
赤に沈む。
「伊作、お前いい加減起きろ。」
聞き慣れた友の声にうっすらと目を開く。
「・・・夕方?」
「近く通ったからよってみりゃ縁で寝てるしよ。風邪ひくぞ。」
「さっき三郎が…」
「三郎?ああ、鉢屋か?夢でも見たのか…あいつこの前死んだって。」
そうだ、訃報はちゃんと聞いた。
それに夢のなかで鉢屋とて、己が殺されたと言っていたではないか。
「いつくらいだっけ?文次から聞いたの。」
「桜が終わる頃だったな。」
「桜が・・・あぁ、四十九日だ。」
己の口からこぼれ落ちた言葉に確信をする。
嗚呼、お前は本当に一言告げるために黄泉に渡る前に寄ったのか?
答える声は聞こえなかった・・・
fin
誤字脱字のオンパレード…誠に失礼いたしましたorz
いつかこの二人のハッピーエンドを書きたいとおもっております。
需要はなさそうですが(笑)
では、ありがとうございました。
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