【学級五年】宵闇祭り 壱

こんにちは、花崎です。
季節はずれも甚だしいのですが、イメージがぶわっと広がり書いたお話です。
ここにいたるまですっごい長いお話、設定諸々あるんですけど、まぁ、そちらは追々。

意外に長くなってしまったので二つに分けます。


【ご注意】
シリアスと呼ばれるカテゴリーに当てはまるものが随所に散らばっている。
花崎は五年級長二人組みに大分夢見ている。
年齢操作
オリキャラ有り
勘ちゃんの将来を大分捏造。
(家族とかそういう表現がございます、苦手な方はお控え下さい）



以上、問題のない方は「Read More」へお進み下さい。

 

いーち

にーい

さーん

よーん

ごーお

 

 

子供のように何やら数えるこえがして勘右衛門は自室の戸を静かに開けた。

「勘、すごいだろう？秋はこうでなくては！」

開けた戸に合わせるように掬い上げた落ち葉を舞上げて三郎がふんわりと笑っていた。

 

【宵祭 - yoimatsuri -】

  

林檎飴
べっこう飴
甘酒

ぽんがし

あたりくじ

 この日のためにと貯めていた袋を一つ

楽しそうに懐にしまい込み三郎は勘右衛門を振り返った。

 「早くいこうぜ」

「そんな急がなくてもお祭りは逃げないよ」

 至極楽しそうな声に自然と勘右衛門の口元に笑みが浮かぶ。

口から出るのは呆れた言葉だが、その実勘右衛門も遠くに聞こえる祭囃子に否応なく気持ちが高ぶる。

 「林檎飴なくなったら、勘のせいだぞ。」

「はいはい。じゃ、急ぎましょうか。」

言葉とは裏腹にさくさく歩かない勘右衛門に痺れを切らし、

三郎はつかつかと歩いた分戻ってきて、ぐっと腕をひいた。

「転ぶんですけど」

「だれが？」

「尾浜くん」

「あ、い組の」

「そうそう」

だからそんな急ぐなって。

軽い掛け合いの最中、言葉の変わりに己のほうに腕を軽く引いた勘右衛門に合わせ三郎は歩みを緩めた。

 学園の近くで行われる月見を兼ねた宵闇祭。

一年生の頃からか、委員会のメンバーて行くのが恒例になっていた。

今年はあいにく一年生が様々理由で行けず二人だけで行くことになった。

 「お土産、買わないとね」

「ちびたちは林檎飴だろ。で、先輩にはべっ甲飴。」

何かを思い出すかのように三郎はふんわりと笑った。

 『私はべっ甲飴が一等すきなんだ。ふたりは？え。ふふ、二人とも林檎飴なの？仲良しさんだね。』

 その笑みが誰を何を思い出しているのか容易く理解できた。

「そうだね。」

三郎に同意しながらも、勘右衛門は三郎に気づかれないようにため息を吐いた。

(ほんと信じられないよな。)

まさか二人でこの祭にくる日がくるなんて思わなかった。

もちろん委員会が二人きりだった四年生という一年は紛れもなく存在する。

が、昨年は互いにおつかいが入り祭のことは終わってから思い出した。

 (三郎の落胆といったら、なかった)

 『仲良く、ね？』

縛るつもりなど全くなかっただろう言葉に縛られた去年は決意があった。

それはもうまるで義務に近い。

『来年は、必ず二人揃って行こうな!!勘。』

約束を果たさなければならない、そんな重たさだった。
あの重さが、綺麗になくなり今年は日に日に祭が楽しみになる、そんな一年だった。
勘右衛門のは本当にそれが驚きだった。

(あんなに喧嘩して、罵りあっていたのに。お互い変わるめんだな)

距離も互いへの信頼感も、なにもかも。

 

「あ、なぁ、勘。みんなには飴細工かな。それとも干菓子かな」

「なるべく日もちしないとだめだよね。」

ところ狭しと軒を連ねる屋台の明かりを確認しながら答える。

祭囃子はもうすぐそこだった。

 
 

『ほらほら、喧嘩しないの。ひとりよりふたりの方が、さんにん、よにん。
 皆でいるからお祭りは楽しいんだよ。二人ももう少ししたらわかるよ。ほぉらね？』

「やっぱりひとりより二人のが楽しいな、勘。来年は四人だな！」

三郎の声に被り、ふいに聞こえた声に足が止まる。

「勘？」

(せん、ぱい？)

幻聴だと思うにはいやにはっきりと聞こえた。

あれは確か二年前のお祭りで喧嘩をした三郎と勘右衛門の手を引いた先輩からかけられた言葉だ。

(ずっと忘れていた)

困ったように笑う顔が印象的な人だった。

柔らかな穏やかな人。

彼の先輩がいなくなったのはあの年の宵闇祭から、調度十五日後の夜闇。

あの最期になってしまった祭の日、言い伝えだと言って先輩はもう一つ、

三郎と勘右衛門に伝えたのだがその日はそれを思い出せなかった。

 

to be...