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花は毒にも薬にも…
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と言うわけで、花崎です。

たまには季節的なことをしようかとおもいます。



今回は現パロです。

ナチュラルに鉢雷・笹豆腐がでてきますので。

アウトな方は回れ右。

伍忍のイメージは20代前半。

大学生だと3回生か4回生、のイメージ。

あいも変わらず伍いは仲良しで、三郎と勘ちゃんは悪友。

雷蔵の家族を捏造してます。

(ちょっとシリアスなことのあったご家族です。ごめんなさい)



以上が許せる方はどうぞ。





[  HOT MILK ]



 

「あったかい牛乳にたっぷりのお砂糖。甘いほどやさしさが入っているんだよ。」

 

知っていた?

印象に違わない笑顔を浮かべて、己の前にマグカップが置かれる。

正直甘いものは苦手だし、できれば避けて通りたいのだけれど、そんな風に笑って差し出されたら、突き返すこともできずに、受け取った。

 

「知らなかった。」

「母さんがね、教えてくれたんだ。」

「そうなんだ。」

「そう。これしか覚えていないけど。」

 

それだけ覚えているだけでも、十分。

そう言って彼はあまい甘いホットミルクに口をつけた。

彼に真似て口をつけてみても、やっぱり自分には大分甘い。

(やさしさ、ねぇ)

彼の母親が彼の目の前で不慮の死を遂げたのは彼がまだ小学生のとき。

もうあまり思い出さないんだけどね、と笑う彼はそれでも命日が近くなると、当時の現場と似通った場所には立てないし通れない。

その日が、クリスマス・イブなのだと聞かされたのは二人で過ごそうと色々計画を立てていた付き合い始めて初めて迎えるクリスマスが近づいてきたある冬の日。

 

『三郎、ごめん。言いにくいのだけど』

『ん?』

『クリスマスイブ、会えないんだよね。』

『へ?』

『会いに行かないといけない人がいるんだ。ごめんね。クリスマスなら会えるんだけど…。それでいいかな?』

 

あんまりそういう話を自分からしてこない雷蔵の言葉にあの日自分はどう答えたか今でもあまり覚えていない。

ただ、再度ごめんねと困ったように笑った顔が浮かぶからきっと自分は笑って頷けたんだろう。

その話を聞いてから25日のクリスマスは雷蔵と過ごすと決め、前日は大抵仲良し四人で馬鹿騒ぎしていたのだけれど、

 

「初クリスマスデートねぇ。」

「なんか可愛らしくていいじゃない。」

 

同時にメールの着信を知らせる携帯電話を開いて閉じて、目の前にいる勘右衛門に内容を知らせれば、同じ同じと携帯を振ってみせた。

(張り切る初クリスマスか)

己のときは結局考えつくしたプランではなく、雷蔵の部屋で二人炬燵で1日遅れのケーキを食べたっけ。

(それはそれで温かくてよかった)

 

「あの店だよなぁ・・・。」

「あそこちょっと敷居高いよね。」

「八も頑張るよなぁ。」

「まぁ、初クリスマスデートだし?」

「そこはいいんだ。頑張って張り切って場所決めて服が決まらないってどういう。」

「よくあるパターンだよね。でもま、へんなフレンチとかでなくてよかった。」

「ま、たしかに。」

 

 

『三郎、悪いんだけど・・・服一緒に買いに行ってくれねぇ?あ、あのなクリスマスだろ?店予約したんだけど、会うような服がなくて。ちゃんと礼はするからさ』

『勘ちゃん、何着ていけばいいの?クリスマス。』

 

 

ソファに我が物顔で寝転ぶ勘右衛門はうつ伏せの顔をこちらに向けて、何故だかとても楽しそうに笑った。

「兵助何がいいかなぁ?ふわふわのもこもこにしたい。」

今年はファーが可愛いんだ。

とどこから取り出したのかファッション雑誌をぺらぺらとめくる横顔は意外と真剣だ。

「・・・あいつ男だぞ。」

「しってますー。だけどはじめてのクリスマスデートだよ!?おしゃれさせないでどうするの?」

久方ぶりに「兵助大好き」を地で行く勘右衛門をみて(といっても常日頃からそうと言えばそうなのだが)、三郎は己に頼みごとをしてきた八左には何が似合うかと思い巡らせる。

ふっと漂った静けさに今の今まで忘れていたことを思い出し、三郎はくるりとソファを振り返った。

「てかさ、勘。今年二人きりだぜ?」

「いいんじゃない?俺らもデートしようよ♪」

やなこったとは断れずに三郎は曖昧に笑った。

二人でイルミネーション輝く街並みを歩くことに否と唱える気などない。

ないのだが、

「飛び切り美人になるからね。」

ただ、こう何事も楽しみすぎる勘右衛門の感覚には時折ついていけない。

「やめれ」

高校時代の逆ミスコンを思い出し、三郎はふるふるを首を振ってみせる。

兵助が泣くほど嫌がっているんだから、俺がでるよ。

といって「誰もが振り向くかっこ可愛い女の子」に変身し、様々用意されていたタイトルを総なめにした勘右衛門を思い出す。

(あれ、まじで女の子なんだよな)

普段からメンズとレディスの枠を軽々と飛び越えアレンジする勘右衛門は、時折性別すら飛び越えてみせる。

(別にいいんだけど、いいんだけど、)

ソファの影からぱたぱたと動く足も、夏にさらす腕も別に細くもか弱くも無いのだが、あの技術は素晴らしい。

「ねぇ、三郎?」

飽きたのか閉じられた雑誌が静かに床に落とされる音が響いた。

「あー。」

「せっかくだしさ、競争しようよ。で、クリスマス終わったら聞くのさ。どうだった?って。」

「で?」

「評価が高かったほうが低かったほうに何かおごるってどう?」

「…評価基準が曖昧なので却下。」

「えー、じゃぁさ、何も言わずに立花先輩とタカ丸さんと・・・、ん-、意外とセンスのいい綾部っちか滝っちょに見てもらって、評価が高かったほうが勝ち、でどう?」

「・・・。」

「いいじゃーん。ね?」

にこにこと笑う勘右衛門に思わず頷いて、そうして三郎は眉根を寄せた。

(まず、間違いなく一票すでに奪われているからあと二票、か)

こりゃ本気でやらないとな。なぞと考えながら立ち上がる。

 

「勘。」

「ん?」

「珈琲飲むか?」

「ミルクとお砂糖たっぷりでお願いします!!」

振り向けばひらひらとソファから手が生えている。

「お前・・・。」

「甘くてみるくなモノにはやさしさたっぷり。」

三郎の低い声に、楽しげな声が返る。

「雷蔵も同じこと言っていた。」

「そりゃそうだよ、雷蔵が教えてくれたんだから。」

そう言ってにやにやと笑いながら勘右衛門は、軽やかに立ち上がる。

その勘右衛門の視界を何かを諦めているような三郎が流れるような手つきでキンキンに冷えた牛乳をレンジにかける。

(あぁあぁ、もう・・・相変わらず面倒くさい性格しているよ、お前は)

「しけた面していると、全部がしけちゃうんだよ、三郎。雷蔵が帰ってくるまで遊んであげるから笑いなさい。」

そう言った笑い声が思うより近くに聞こええて三郎はふっと振り返り、そうして驚いたように半歩下がった。

「勘」

「レンジのさ、このオレンジ色好きなんだ。」

くるりとくるりと回るミルク入りのカップにオレンジの柔らかな光が反射する本音があまり覗かない勘右衛門の目。

「あったかいだろ?」

三郎の驚きに満足したのかその一言とふんわりとした笑みを残して、勘右衛門は慣れた手つきでドリップの準備を始めた。

 

 

 

思う以上にイメージ通りになった初々しい二人を各々見送り、待ち合わせの場所で待っていた勘右衛門に三郎は思い切り顔を顰めた。

「お前。」

「言ったじゃん。飛び切りの美人になるよって。」

「や、だからな、今年初めてのクリスマスイブデートなんだよ。」

「ふぅん。」

「おまっ」

「先約、先約。」

ちょいちょいとマフラーに半分埋もれる己の顔を勘右衛門は指して笑った。

「やだなぁ、俺がそんな気をきかせると思ったの?」

その言葉にギリっと奥歯をかみ締める。

(兵助に向けるやさしさのほんの何%か俺にくれは、しないだろうな)

 

毎年父親と姉と三人で墓参りに行く雷蔵は今年はちょっと事情が変わり、別の日に家族で行くのだと伝えてきたのはクリスマスイブから丁度3日前。

『勘ちゃんと二人なんでしょ?だったら三人で遊ぼうよ。駄目だよ、先約断ったら。』

三郎がどう答えるかを見越した言葉に深く深くため息を吐いたのは秘密だ。

「雷蔵まだかな。」

「ギリギリだろ。」

「どんな格好で来るかな。」

「いつも通りだろ。」

「だよねぇ・・・今年はさ、二人をプロデュースしたわけだし」

「?」

「いっそ雷蔵もプロデュースしちゃおうか。」

ほら、名案だろ?と笑った勘右衛門はそうして

「夜は二人で過ごすんだからその前にちょっとおしゃれさせなきゃね。」

と相も変わらずいたずらっ子の顔で笑った。

返事をする代わりに照れたように顔をそらした三郎の耳がほんの少し赤いことに気がつき、勘右衛門はけらけらと声を立てて笑った。

 

きょろきょろと待ち人を探す雷蔵が三郎の横にいる勘右衛門を目で捕らえて、驚きながらも「勘、凄い可愛い!!美人さんだね」と笑うまであと10分。

 

 

Fin





お粗末さまでした。

お話モトネタはお友達に頂きました。

皆様もよいクリスマスをお過ごしくださいませ。

花崎は仕事です(笑)

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