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花は毒にも薬にも…
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どうも、こんばんは、花崎です。

忍フェスで出そうと思っていたお話しですが、
リアルがえらいことになっていて、今後本として出すのは難しいな、という結論を出した為、
こちらにてUPさせていただきます。

【out of hearing】シリーズです(笑)

四季にあわせたお話しを書こうと画策しております。
一話目は夏のお話です。
いつまでかかるか分かりませんが、お付き合い頂ければ幸いです。
シリアスにはせず、メイン3人の友情とか日常とかそういうものをかいていければいいと思います。

また、こちらは他ジャンル(生ものww)で書いたお話しのリメイク版となります。
※大分内容が違うので設定、及びタイトルのみが同じもしくは近い感じですかね。
思い当たり「これって、○○のリメイクですか?」等ございましたら、拍手かなにかでお伝え頂ければと思います。

【注意事項】
・現パロ
・中心は5いとハチ
・オリジナル設定
 ⇒勘ちゃん、へいすけ、はちは幼馴染
 ⇒へいすけは耳が聞こえず、声が出ないという設定
・大分上記3人に花崎が夢を見ている


以上問題がないようでしたら『Read more』よりお進みください。

 



己の部屋に常から遊びに来ている友達達が、常とはことなりバタバタといったり来たりを繰返す。
その度、馴染みのものが片付けられ、捨てられ、減り行く必要な者達が綺麗にダンボールへ仕舞われる。
一人で何もかもやるつもりであったが、手伝いに来てくれた友達は勝手知ったるなんとやらと部屋を区画分け(そんなに広いわけではないけれど一人暮らしにしては部屋数はある)し担当を決め整頓していく。
唯一区画分けから外された自室をのんびりと片付けていく。
必要最低限しかものをおかないことにしていた自室は思ったよりも早く片付きそうで、空になったカラーボックスをずらす。
あえてそんなところを掃除したことはなく、どかしたそばから細かい埃が舞い自室でありながら眉を顰めた。
その埃の中にひっそりと鎮座する四角いものが目に入る。
目には入ったがその四角いものがなんだか分からずに、自然にことりと首を傾げた。
手に取るのを一瞬ためらうも引越しするのだから、と結果的に放ってはおけず、そのまま手を伸ばす。
 
「てがみ・・・?」
 
宛先には見慣れた自分の名前で、流れるような字は見慣れたものよりも大分丁寧に書かれたようだった。
年月がたったことを知らせるように翳むように色を変えたそれは、大層綺麗な水色だっただろうことが分かる。
( なにせその色はかれが好きな色だからだ)
そこまで考え及び、彼から手紙を受け取ったことなどあっただろうか?と思う。
自分が就職し、地元を離れるまでは長く離れたことはないし、
就職してからはもっぱら彼の好きな「手書き」よりも現代社会の申し子と言われるメールが主だ。
そうではあっても、目の前に動かぬ証拠となる手紙がある。
切手も貼られ、ひっくり返せば、細かな埃が舞いその中に宛名と同じ字で控えめに彼の名前が記してある。
 
「開けないと、」
 
堂々巡る思考に終止符をうつようにあえて口に出す。
近くにあったカッターで丁寧に開けば、紙の繊維かそれともほこりか判別できない薄い粉が舞う。
開けるだけ、開けたもののどうしてだか中身に手を触れることが出来ずに、無意識に幾度も切り口を手が撫ぜる。
この手紙に今の関係を壊すような内容が書いてあったら怖いと漠然とした不安が襲う。
今日も引越しを手伝うと訪れている彼とはもう大分長い付き合いで、どうしても伝えたい内容ならば、もう既に告げられていると分かるものの、それでも封筒から便箋を取り出すことが出来ない。
空気にあまり触れていなかったのか封筒に守られていた便箋は外側のそれよりも大分色が残っている。
だからこそ、書かれた当時の思いがそのまま残って、宿っているようで、届けられた当時開封しなかった後ろめたさがある。
ぐだぐだ悩んでいるのが自分らしくなく、勢いをつけて、便箋を封筒から取り出すと、指からすり抜けて、一枚の写真が落ちた。
 
 
 
 
【out of hearing 1】
 
 
 
 
抜けるような青空と蝉の鳴き声。
すぐそこの家に向かっているだけなのに、焼け付くような太陽と遠くのゆがむアスファルトを見て勘右衛門は知らずため息をついた。
暑さにめっぽう弱い(もちろん寒さにもめっぽう弱い)幼馴染にこの時間外を歩かせるわけに行かず、自分から家に行くといったのは昨日の夜。
(まぁ、大抵の人はただの過保護だというけど)
届けたいものもあるし、暑いし、なぞいくつも理由を並べれば、ただ一言「まっている」と告げる携帯の画面。電話が出来れば瞬時に済むような会話も、ことそれが出来ない二人なのだから面倒でもカチカチとキーを打つ。
『ほしいものある?』
『コンビニ寄ってくるの?』
『兵助いく?』
『いかない。メロンシャーベット。メロンに入っているやつ。』
『了解』
カチカチ、送信、低い振動と受信。幾度か繰返した頃、ぱたりと受信が途絶えた。
時計を見れば日付を超えていて、夜更かしの出来ない兵助が寝たことを携帯は無言の内に告げた。
 
「ありがとう。」
受け取った手はこの夏あまり外に出ていないことを如実に語るほど白かった。
「なくなったでしょ?この前。駅前のなんていったっけ?雑貨売っているとこに行ったら兵助が好きそうなのが売っていたから。」
まっさらな和紙。薄く漉いた和紙はメモ帳に加工され、すっぽりと彼の手に収まっていた。
「ありがとう。」
そういうと兵助は机の上に常備してある濃紺のインクのペンを手に取り、二つの名をまるで呼びかけるように書いた。
大事に大切にしてきた幼馴染が新しいノートを手に入れる度、最初に書く言葉が自分達の名前であることがやはりとても嬉しい。
 
「なんで?」
「なにが?」
「いつも俺と八の名前なの?」
「いや?」
「嬉しいけど。」
「ならいいだろ。」
 
綺麗な和紙にさらさらと黒い字が躍る。
綺麗、書きやすい、ありがとう。踊る言葉は音のない言葉として伝えられたけれども、改めて文字にされるとなぜだかとても温かい。
その字をすっと撫ぜると、そのノートが力を持って己の手に当たる。
何か書いてと言わんばかりに差し出された和紙のノートを受け取る。
お互いに手話も読唇も出来るにも関わらず、兵助は紙に言葉を落とすのが好きだ。
 
『文字は人を表すし、手話では表せない気持ちが乗るから。』
 
以前不思議に思い問えば、さらさらと男性にしては柔らかい文字がそう告げた。
考えてみれば、この言葉を話せない幼馴染は親しい間柄である人とは伝達手段以外の意味を持って筆談をしているところがある。
(だって俺も含め彼の「親しい」人は皆、彼との伝達手段をいくつも持っている)
「文字は人を表すねぇ。」
『そうだよ。勘ちゃんの字はとても強くて優しい。八は元気でまっすぐ。』
さらさらと書き付けられた文字は、柔らかくそれでいて酷く排他的だった。
その字は嫌いではないけれど、なんだろうか、漠然とした不安と暗い気持ちが勘右衛門を囲う。この夏が過ぎ、秋冬と次の春には今までよりも大きな環境の変化が待っている。
(大丈夫、かな)
もう一人の幼馴染である八左衛門とふたり兵助には内緒で守ってきた約束がある。
 
『俺達二人とも兵助のちかくにいなくても兵助が大丈夫なように。』
酷く内向的な兵助は、人との間にぶ厚い透明な壁を気付きあげる。相手がそれにめげず、その壁を抜けるか、穴を開けるか、爆破するか、よじ登るかしない限り自分からは決して触れてはこない。
幼馴染はその人生の全てで横に居れるわけではない。
小学校中学校と年を重ねる程にその感覚は強く、勘右衛門と八左衛門を襲った。
 
思うより大分早くその日が来るような気がして、勘右衛門はアイスが溶けるからと告げる眼差しに催促されるがままに、メロンシャーベットを渡しながら小さくため息を吐いた。
 
 
 
家の近く、丁度公園をはさんでのお向かいに引っ越してきた子だよと母に紹介されたのがはじめて兵助に会った日だった。
大して背丈の変わらないその子は零れ落ちそうな真っ黒な目でこちらをじっとみていた。
(女の子?男の子?)
じっと見つめる黒い目と白い肌が周りにいる誰とも違い、勘右衛門はぼんやりとそんなことを考えたことを思い出した。
そうして同時にあまりにじっと見つめられ共にいた八左衛門が柄にもなく戸惑っていたのを思い出す。
今にして思えば、段々と耳が聞こえなくなり、話す術を持たぬあの子どもはそうやって相手を観察し、距離を測っていたのだろう。
(まぁ、その癖は10年以上たっても変わっていないのだけど)
『はじめまして。』
幼稚園で教わった握手をしようと差し出した勘右衛門の手をかわらずじっとみつめ、そうして兵助は静かに首をかしげた。
『はじめましての握手だよ。』
首をかしげたまま動かない兵助の手をとって
(あぁ、叩き落とされたな)
当時の兵助は人に対する警戒心が半端ではなく、人に触れられることすら大嫌いだった。
あの日、はたかれたにも関わらず自分はどうしても握手がしたく、再度手を取ったことを思い出す。
叩き落される、めげずに手を取る、叩き落される、めげずに手を取る。
途中から見かねた八左衛門が勘右衛門と兵助の手をとって、握手をさせようと引っ張り
(そうして泣かれた)
第一印象は最悪だったはずだ。
そうであったにも関わらず、今では勘右衛門も八左衛門も誰よりも兵助の近い位置にいる。
 
 
 
窓越しに暑い日差しを見やり、兵助はそっと窓から離れた。
直接日に当たらないとはいえ、やはり窓のそばは他のどこよりも暑い。
冷えた空気が部屋を回る。内からも体温を下げようと冷凍庫から取り出したメロンシャーベットをしゃりしゃりとかき混ぜる。
「混ぜたらシェイクみたいになるよ。」
「美味しいから平気。」
おなじアイスを端から綺麗に掬って口に運ぶ勘右衛門はそういって適度に解けたシャーベットを口に運ぶ兵助を横目で見やる。
普段そんなに表情が変わらない兵助は幾分か楽しそうだ。
(目は口ほどにものを言う)
幼い時分、その言葉の意味を知り真っ先に浮かんだのはこの幼馴染だ。
さきから何度も記憶の海に沈む勘右衛門は、抜けるような青空と時計と、普段だったらもう一人座っている幼馴染の定位置を何度も行き来する何かを言いたげな幼馴染の目に気がつかなかった。
『ハチ遅いね。』
ぽそりと呟くように言葉がつづられる。
「あいつね、5回遅刻したの。」
「学校?」
「そうそう。え?そう5回遅刻するとね、補習なんだよ。」
真向かいに座る兵助に平素よりほんのすこしゆっくりと話す。
「ばか。」
「いってやって。兵助がいえば聞くよ、きっと。」
そう告げる勘右衛門に兵助は困ったように笑って、そうして、濃紺のペンを走らせる。
「ごもっとも。」
 
 
『だったらもう直っているよ、勘ちゃん』
 
 
反論1つ浮かばない言葉にしっかりと頷いて勘右衛門も壁にかけられた時計を見上げる。
土曜日の午前授業の日。
同じ学校に通うことが出来ない3人組の午後がゆっくりと溶けていく。
 
 
***** ***** ****
 
 
 
 
片づけが進まぬまま、封筒から滑り落ちた写真を見ながら、もう10年以上前になるやりとりを思い出す。
(これが原因、だから俺は悪くない、と思う)
誰に聞かせるわけではない言い訳がもれる。
綺麗な青空と、見慣れた懐かしいジャングルジム。
一等上に登ると空が近くて、夜だと星に手が届くんだよ、と幼馴染と見上げていたのがすぐ昨日のように思い出される。色あせた写真でないことと、高く澄んだ青空であるところを見ると送られてきた手紙の消印とそう遠くない日に撮られたものだろうと、推測する。
「兵助好きだったもんなぁ。」
決して一人では登ろうとしなかったけど、と自然と昔を思い出し口元が弧を描く。
「さて、何て書いてあるのかな。」
封筒から引っ張り出した便箋を広げ、そうして笑った。
 
 
 
尾浜勘右衛門様
 
梅のつぼみも膨らみ始める今日このごろですがお元気ですか?
こちらは元気でやっています。
つい先日、進学する先も決まりました。
卒業にあたり手紙を書かないかととある先輩に便箋と封筒を渡されて、真っ先に浮かんだのは、勘ちゃんと八でした。
改めて手紙をと考えると難しいものですね。
たくさん考えたのだけれど伝えたいことを一言だけ
 
いつもありがとう。
二人がいたから今の自分があります。
これからも宜しくお願い致します。
 
勘ちゃん、大好き。                      
 
なんか照れるね。
 
久々知兵助
 
 
fin

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