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花は毒にも薬にも…
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こんにちは、花崎です。
一個前の続きです。


【ご注意】
シリアスと呼ばれるカテゴリーに当てはまるものが随所に散らばっている。
花崎は五年級長二人組みに大分夢見ている。
年齢操作
オリキャラ有り
勘ちゃんの将来を大分捏造。
(家族とかそういう表現がございます、苦手な方はお控え下さい)

以上、問題のない方は「Read More」へお進み下さい。

[ 宵祭 弐]



どんっと左腕に衝撃が走り、勘右衛門は驚くと共に、短く息を飲んだ。
「椛(もみじ)…?」
手を繋いでいたはずの幼娘がいない。
(え、ちょ、まって…)
いつから、いないのか。いつはぐれたのか。
宵闇の中、慕っていた先輩と気のおけない三郎(とも)との楽しかった思い出にひたりすぎていた。 

「椛!!」

 人込みのなか流れに合わせて、声をあげながら進む。
見知った顔に「尾浜屋の旦那どうしたの」と常ならぬ様子に声をかけられるが愛想笑いひとつ返せずにただひたすらに小さい影を探す。

「あ!とうさま!」
「勘。」
進む方向とは逆の方向から幼い声とよく知った声が聞こえ勢いよく振り返った。
「椛、と三郎か…?」
「久しぶり。ダメじゃないか、こんな人混みで手を離したら。」
抱き着く娘をここまで連れてきた友人、三郎、はにやりと笑った。
いつぞやの宵闇の祭に合わせ尾浜屋で誂えた着物にトレードマークの狐の面。
「助かったよ。悪かったな。」
「かまわないさ。椛ちゃん、次はとうさまの手を離してはだめだよ」
三郎は幼いこどもと目線を合わすように座り笑った。
「うん。ありがとう狐さん。あと林檎飴も!!」
「お近づきの印さ。また来年会おうね。」
「うん!」
ふたりのやりとりを微笑ましく見守っていた勘右衛門はひくりと頬を引き攣らせた。
「きつね?林檎飴?」
「名前よりこれがわかりやすいんだと」
己が手に持つ、べっ甲飴をがりっとかみ砕き(三郎以外はその音が嫌いだ)面白がりながらもどこか困ったように笑った。
「なるほどね。三郎まだ時間あるか?」
「残念ながら。」
「そうか。じゃ、また気が向いたら、今日の礼をするから寄ってよ、お店(たな)に」
「りょーかい。礼は林檎飴でいーよ、勘。また。」
きちんと礼を要求し、ひらひらと狐の面を振り三郎は人混みに紛れ込んでいく。

 「きつねさん、またねー」
三郎に必死に手をふる娘の頭を一撫でし
「よし、椛。林檎飴買って帰ろうか。」
「うん。」
昔と変わらぬ祭囃子を聞きながら。

 

(あ、言い伝え思い出した)

 

宵闇祭が終われば冬がくる。
尾浜屋にも祭前よりも温かさを重視した品物が並ぶようになった。
その店先で温かな外着に腕を通しながら、勘右衛門は番頭に出かける旨を伝えた。
お店(たな)をでた勘右衛門は迷わぬ足に任せて宵闇祭の会場となる参道と社を抜ける。
人が思うより山の上に位置するその神社は参道を進む度、気温をさげる。
(もう少し着込んで来るべきだった)
後の祭りだが袷をぐっとよせて勘右衛門は寒気を避けながら足を進める。
(年をとったな)
前ならなんてことなかった道も今は少ししんどい。

 一番下の娘が次ぎの春で5歳。
学園(まなびや)をでて早二十年。

 
「よいしょ。」
最後の一息を入れて登った場所は森のなか小さく拓けている場所で、目印の如く置かれた小さな石。
(紅葉…)
己よりほんの数日前に誰かが訪ねたあと。
「誰が来ていたの、かな。」
答える声はないが、季節の彩りが供えられている、ということにぼんやりと思い出す人がいる。
(庄ちゃんかな、彦かな、それとも…)
あの日片割れを亡くしながらも笑っていた先輩か。
(まだ訃報は聞いていない。もしかしたらもう、彼岸に渡って…いないだろうな。)

 「三郎、あっという間に寒くなったね。遅くなってしまったけど、この前のお礼。ありがとう。娘をみていてくれて。連れてきてくれて。え?ちゃんとみてろって?その通りだね。」

 座り込み冷たい石を撫でながら笑う。
(『お祭りのときは彼岸に渡ったひとが時折会いにきてくれるんだよ』か。)
石の前に置いた赤い赤い林檎飴。
お礼だよ、ともう一度言うと居ないはずのきつねの笑い声が聞こえた。

FIN

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