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花は毒にも薬にも…
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こんばんは、花崎です。

はちらいで「はちみつ」です。

この時期、ありがちな風邪ネタ&現パロです。

別ジャンルでUPしていたもののリメイク版でも有ります。



なんだろう、花崎はかぎりなくはちらいがらいはちになります。

でも、はちらいです。



あ、風邪予防にジンジャーティーはほんとに効きますよ~。

身体ぽかぽか。

お試しくださいませ。



それでは本文はRead moreから。





「ケホッ…ケホッ…」


先に寝ているとベットに潜り込んだ彼が不規則に咳き込む音が響く。

やっぱりなと、読みかけの本に栞を挟んで、立ち上がる。



東奔西走と言えば聞こえは良いが、休みもろくにとらず走り回り仕事に打ち込んでいた日々。


ゆっくり出来る日も、ほんの少しの合間も遊んでいるかと思えば、眠れないといって薄着で窓際に座っているようなこともあった。

気を抜く時にあまり抜いていず、自然と無理と疲れが身体に残る。



『頭ぐらぐらする。』

向かいに座った三郎が小さく不調を訴えて溜め息を吐いた。

『なに?』

『なんでも…雷蔵、あれ作って、あれ。』

『代名詞で言われても分からないよ。』

『あれ…雷蔵が良く飲んでるやつ。ガリ。』

『練り生姜ね。』

ちょっと待っていてと、立ち上がり冷蔵庫を開ける。

『風邪?』

キッチンから問うと小さな声が返る。

『少し疲れた。』

『じゃぁ、あったかいの飲んですぐに寝なね?』

『・・・せっかく二人でいるのに』

『悪化させたら、僕悲しいけどな。』

彼が好きだという笑みを浮かべ、温かいジンジャーティーを差し出す。

蜂蜜で甘みをすけたそれが三郎好みらしい。

『熱い。』

『うん、気をつけて。』



 

両手でマグカップをもちゆっくりと飲んでいる三郎を見たのはそういえば、昨日の夜だった。

(昨日から大分しんどかったんだろうなぁ)

「三郎?」

ベットサイドに静かに手を置いて問いかければ、またケホッケホッと乾いた咳が聞こえる。

ぱちっとサイドランプをつける。

薄暗かった寝室が淡い色に染まる。

「まぶしい。喉痛い…。」

「無理ばっかりしているからだよ。」

冷たかったらごめんね、と小さく断りながらそっと額に掌を当てる。

日ごろより大分熱をもつそこに眉根を寄せる。

( 高い、な)

「ヒエピタとアクエリアスかなんか持ってくるから待ってて。」

「喉痛い。頭痛い。」

「ん~、重症だね。しばらくは絶対安静。」

ちゃんと布団の中にいるんだよ、となんだかんだと理由をつけて外に出たそうな三郎に釘を刺す。

「けほっ…雷蔵。」

「何?」

「寒い…。」

「完璧。」

溜め息と同時に吐かれた言葉は隣室の三郎に届くことはなかった。

(まだ熱あがるなぁ…あれは。)





『ちゃんと頭乾かして寝なよ。』

『はいはい、雷蔵最近うるさいね。』

お座なりに拭いた髪の先からぽたぽたと雫が落ちる。

『そんなことないよ。』

『あるって。』

『三郎最近疲れているでしょ?風邪引いてから文句言われるのはごめんだからね。』

呆れたような声に、三郎が振り向けば雷蔵は借りたのだという本をぱたりと閉じたところだった。

『七松先輩、そうやって風邪引いて先輩にあたるらしいよ?』

そのときの何かを思い出しているのか雷蔵は口元に手をあててくすくすを笑う。

その先に仲のいい先輩の影を見て、三郎は眉を顰めた。

(面白くない)

『ねぇ、三郎?』

『なに?』

『ちゃんと拭いてね。風邪しんどいよ?』



 

(別に子どもじゃないし、そんな簡単に風邪ひかない。)

そう高をくくっていたはずなのに。

(ちゃんと言う事聞いておけば良かった…。)

ぼーっとする頭でそう考える。

「大丈夫?」

冷えピタとアクエリアス片手にもう一度のぞき込んでくる雷蔵に首を振る。

喉がカラカラして話す気もあまり起きない。

「重体だね…ほんと、取り敢えずこれだけは飲んでね。まだ寒い?」

「寒い…喉痛い…寒い、雷蔵のアホ。」

「僕のせいじゃないからね。」

一通りの悪態を軽く流し、雷蔵の手が額に触れる。

己の体温が高いせいかその手が冷たくて心地よい。

ひんやりとするその手が気持ちよくてすす…っと近寄る。

「猫みたい。」

「うっさ…っげほっ。」

雷蔵に手を貸されつつ起きあがる。

半身を起きあがらせただけなのに身体の色んなところがギシギシ言う。

「まだ寒い?んー、熱上がるかな?インフルエンザじゃないといいけど。」

そう独り言のように呟く雷蔵は三郎を支えたままの体勢でプラスティックのコップを差し出す。

たまたま触れた指まで熱く雷蔵は小さく眉を顰める。

(無理矢理髪とか乾かせば良かったかな…)

自分がしょっちゅう熱を出したりしているので、しんどさは良く知っている。

「あ、飲んだ?じゃ、あとは静かに寝てなさい。」

なんだか一回りもふた回りも幼くなったようなしぐさを見せる三郎を一回ぎゅっと抱き寄せて、普段寝込んだときに三郎がしてくれるように髪にキスをする。

…なに?」

「もっかい。」

「甘えんぼ。」

「うるさい。」

こわれるがままにもう一度キスをして、きちんと寝具を整えて、空になったコップを持ち立ち上がる。

「お休み。」

「お休み…。」

何か言いたげな目をしている三郎に気が付いてはいたがさっきまで喉が痛いと乾いた咳をしていたのを思い出し何も問わずにいた。

(治ったらね。)

思う存分文句でも我が儘でも何でも聞いてあげよう。

そんな雷蔵の心の中でのつぶやきが聞こえたのか否か、少しするとすーすーと規則正しい寝息が聞こえる。







 



 



 



おまけ



「薬のんで…。」

「イヤ。」

何度目か分からない問答に雷蔵は盛大な溜め息を落とした。

三郎が目を覚まして直ぐに、汗で濡れた服を着替えさせ、作っておいてお粥を食べさせ、後は薬だと差し出した瞬間から早何度目か。

「我が儘ばっかり言ってないで、いいからこれ飲んで。」

ずいっと差し出せば子供のように横を向く。

「イヤだ。」

「別に辛い身体引きずってどっかいけって言ってるんじゃないんだから。」

「イヤ。」

「なんで飲まないんだよ…熱下がってないんだから。」

「苦い。」

「小さい子みたいな事言わないで。」

「雷蔵が酷い。」

ふいっと完璧にへそを曲げたゆきのにトドメの一発を刺そうとは思うがどうも言えない。

「三郎、いい加減にしないと…」

「寝たら雷蔵どっかいくじゃん。」

「は?」

「どっかいくだろ、兵助と昨日?一昨日?古本市がどうのって話してただろ。」

熱のせいだけじゃなくほんのりと赤くなった横顔。

「行かないから、約束は昨日のうちに断ってあるから。」

…。」

「別に古本市はまたあるし。しんどい三郎置いてけないでしょ?ね?」



数十分後、静かに眠る三郎の額に優しく熱を計るように手を置く。

昨日の夜中よりは下がったように思い、安心したように一人笑うとリビングに戻りゆっくりとソファに沈み込んだ。



 



fin

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